156.歩けなくったって
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雨の遠野:カッパ淵・・・何か、いそうです・・・
コミュニケーションに関する書籍、セミナーは世の中にたくさんあります。たしかに私自身も、それらを提供する仕事をしているわけですが、最近、私が何から一番学ばせていただいているかというと「人との出逢い」です。目の前で向かい合う生身の人の体験、想いから一番深い学びが得られる気がします。「人って本当にスゴいな~」、「コミュニケーションって深いな~」。心に響くものがあります。
先日、セミナーに参加してくださった理学療法士のMさんが、リハビリ中のA子ちゃん(現在、歩行練習中。近々、学校に復帰予定)とのやりとりについて報告してくださいました。最近、A子ちゃんの家族や周囲の人は「歩行がんばれ、がんばれ!」とお見舞いに来るたびに励ましていますが、A子ちゃんの方は「なんでみんな歩け、歩けって言うの?」といささか落ち込み気味。ここ数日はリハビリも出来ないくらいぐったりして、精魂が抜かれたような表情でベッドに横たわっていたそうです。
A子ちゃん:「なんでみんな歩け、歩けって言うの?私だってがんばっているんだから・・・」
Mさん:「そうだよね、がんばってるよね。こんな短期間で復学だなんてすごいことだよね」
A子ちゃん:「歩けなくったって、車椅子だっていいじゃん・・・」
Mさん「どうしてそう考えたの?」
A子ちゃん:「だって、歩けない私なんてだれも認めてくれないわけ?車椅子の私ではダメなの?」
Mさん:「そうだよね、車椅子でもいいよね。何で歩かなければいけないの。車椅子でもA子ちゃんはA子ちゃんなんだからね」
Mさん:「そうだ、そんなんだよ!車椅子の私なんか認めてくれないってことなの?歩けなければ私を認めてくれないってこと?」
Mさん:「A子ちゃんは今の自分を認めて欲しいんだよね。そうだ!車椅子でもいいんだよ。いずれ歩けるようになるから焦らないことだよね」
A子ちゃん:「うん、わかった・・・。車椅子だからって関係ないよね」
Mさん:「そうだよ」
このような会話が終わるころには、さっきまでぐったりしていたA子ちゃんがいつの間にかベッドに座っていて、目がギラギラ!何かさわやかな表情に変わっていました。
Mさんはおっしゃいました。
「理学療法士の立場で『なんで歩かなければいけないの?』、『車椅子でもいいよね』は簡単そうで、なかなか出てこないフレーズです。以前の私だったら、『周りの人の気持ちもわかってあげなよ。みんな心配しているんだから!元気出して!』とか、『復学する不安があるんだから、今は落ち込む時期なんだ』ぐらいの事を言っていたと思います。でも、やっぱり、人はまず、今の自分を認めてもらいたいんですね」
「歩けなくったって、A子ちゃんはA子ちゃん」と認めてもらえたA子ちゃんはどんなに心強かったことでしょう。「勉強できなくったって、あなたは私の大切な子ども」、「今、結果を出せていなくたって、あなたは私の大切な仲間」。この立ち位置に立つことから、人をサポートすることは始まるのだということを、Mさんの体験からあらためて教わりました。
Mさん、心からありがとうございます。