コーチ石川の感動日記

16.ただ聴けばいい

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燃えるようなツツジ

 この週末、ある企業様のコーチング研修にうかがったときの出来事でした。コーチ役Kさんとクライアント役Mさんのロールプレイングの様子に、私はオブザーバー役のTさんと二人、じっと耳を傾けていました。どうやら、KさんにとってMさんは、役職も年齢も上の相手で、どうも自分がMさんのコーチ役を務めるのは「甚だ僭越」、そんな気持ちでいるようでした。
Mさん:「そうだな、うちの部門は、仕事の仕方をもっと変えていかないとダメだと思うんだ。このままでは下も育たないし、皆、ただ忙しいだけだ、それに・・・・」

 職場の問題点について、Mさんが「立て板に水」の如く、延々と語り始めました。ものすごい勢いでしゃべっています。Kさんは、この間、表情ひとつ変えず、「はぁ」「ええ」「はい」を繰り返しているだけです。2分ぐらいたった頃に、Mさんが、「あ、オレばっかりしゃべってる。これでいいのかな」という表情で、一瞬言葉を飲み込みました。Kさんも、コーチ役として、何か言わなければ、と思ったのでしょう。何を言おうかとちょっと困った顔をした末にしぼり出すように、
「で、どうすれば・・・、」という一言がありました。

 その言葉を受けて、Mさんはまた自分の想いを機関銃のように語り始めました。Kさんは、あいかわらず、「はぁ」「ええ」「はい」という調子です。あっという間にわずか5分間のロールプレイングの時間は終わってしまいました。

 実は、この時、私は、非常~~に深い感動に浸っていました。そして、その感動は、Mさんも一緒のようでした。ただ、Kさんとオブザーバー役だったTさんだけが「ぽかん」としています。

Tさん:「だいたい、クライアント役がしゃべり過ぎだよ。コーチ役にぜんぜん質問させてないじゃないか。これじゃあ、コーチ役にフィードバックしろって言っても何もできないよ」

石川:「いやぁ~、すばらしいコーチングでした~!感動しました~!」

Kさん:「は・・・?」

Mさん:「いや~、ホントにすごい!答えはオレの中にあったんだな~。しゃべってるうちにどうすればいいのか見えてきたよ。どうしたらいいか方法がわかったよ。なんか、すっきりしたよ!これがコーチングなんだな!」

Kさん:「え?、私、何も質問していないんですけど・・・」
Tさん:「わかったよ。これでいいんだよ。答えは全部相手の中にあるんだよ。オレたちはいつも自分でしゃべり過ぎているから、わからなかっただけなんだよ。Kさん、この方法はいいよ。年上の部下なんかにも使えるよ。そういう人にはこっちから何か言ってもいつも反発されるだけだ。ただ聴けばいいんだよ」
 
 5分間の中で、コーチ役Kさんが質問をしたのはわずか2回だけでした。その2回とも、「で、どうすれば・・・」。質問というよりは、つぶやきに近いものでした。しかし、初めは職場の愚痴を語っていたMさんが、わずか5分後には「まずは自分が場所と時間を設定して部下とコミュニケーションをとる場を作る」という趣旨の具体的な方法を語っていました。課題の解決策を見出したMさんは上機嫌で、ニコニコしています。今にも職場に戻って早速行動を起こしそうな勢いでした。

 Kさんのコーチングは、私のコーチ人生に残る「スゴイ」コーチングでした。
“ただ聴けばいい” この原点を教えていただきました。
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今日は、白井一幸ヘッドコーチのお誕生日です。おめでとうございま~す!

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