221.自己肯定感が高まるプロセスとは
オランダの教員養成課程の話をぜひ
ご紹介させてください。
「え?入学してすぐ教育実習ですか?
毎週!ですか?」
この話を聴いた時、思わず私は何度も
聞き返していました。
「まだ、何も教わっていない段階から、
いきなり現場に出て大丈夫なんですか?」
いかにも日本人的な質問に、オランダで
教員免許をとられた仲本かなさんは、
親切に答えてくださいました。
「はい。理論は、教科書があるので、
各自で読んでおいでということなんです。
理論を踏まえて、まずは、現場で自分なりに
やってみるんです。
週に1~2日は教育実習です。
やってみて、どうだったかということを、
大学に戻って、コーチングの授業の中で
ふりかえります」
「コーチングの授業というのがあるんですか?」
「はい。でも、コーチングの理論を学ぶ授業
ではなくて、コーチングを受ける時間です。
学生7~8人のグループに一人のコーチが
つきます。コーチはあくまでコーチ。
先生ではありません。
学生一人ひとりに質問をしていきます。
『教育実習はどうでしたか?』、
『次はどうしようと思っていますか?』、
『そのためにどんな準備をしていきますか?』と。
このグループコーチングの中で、学生は、
次の教育実習の対策を自分で考えていきます」
「それは、まさしくコーチングによる教育ですね!」
「はい。なので、最初はとても戸惑いました。
なぜ、オランダの大学の先生は、何も教えて
くれないんだろう?と。
全部、自分で考えなさいというスタンスなので、
慣れるまでは大変でした。
でも、そのおかげで、自己肯定感が高まりました。
現場に出てからもこの体験はとても役立っています」
現場に出たら、「答えが一つしかない」など
ということはほとんどありません。
子どもは一人ひとりみんな違うし、
置かれている状況も日々変わります。
理論通りに子どもが動くなんて、
そんなことはなかなかないでしょう。
だからこそ、現場で、数多くの生々しい事例に
触れて、自分で試行錯誤し、自分で解決策を
探っていくことが必要だと思います。
これこそが真の実践力です。
「これまでも解決してきたんだから、
今度も大丈夫!」という自己肯定感が、
どれだけ厳しい現実を乗り越える力に
なるでしょうか。
こういう人たちが、現場で教員をやって
いるので、オランダの子どもたちも自ずと
「自分で考え、自分で解決する力」を
身につけていけるのでしょう。
書物や誰かに正解を求めるのではなく、
「自分の中にこそ、答えはあるのだ」
と思える肯定感、これは大きな財産です。
だから、「教える」、「答えを与える」、
「指示命令する」だけでは不十分なのです。
「承認する」だけでも足りないのです。
「自分で考え、自分で解決する」体験を
たくさん積むことで、自己肯定感は
育まれていくのです。