36.「成果」の前には
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金曜日の夜、札幌は大雨でした。南3条西2丁目あたりで、タクシーに乗り込んだ瞬間に、運転手さんが、
「日ハム、ちょうど今、勝ちましたよ! 最後は横山が抑えました!」
“そうですかぁ!! 私も気になってたんですよ。勝ちましたか! ほんっとによかった!”
「これで3位ですね。プレーオフ、進出ですね!」
“そうですね~。いやぁ~、ほんっとにここまでよく来ましたよね。よくやったと思います”
「お客さん、そうとう入れ込んでらっしゃる口ぶりですねぇ」
“ええ、そりゃぁ、もう・・・、道民ですから!”
ラジオから、日ハムが7-4でオリックスに勝ったということを興奮気味に伝える声が響いていました。車中、運転手さんと私は、ずーっとファイターズの話で盛り上がりました。勝利が決まった瞬間に、こんなふうに喜びを分かち合ってくれる人に出会えるとは、それだけファイターズが地域に根付いているということでしょうか。つかの間の出会いとはいえ、この運転手さんに出会えた幸運を思いました。
実は、今週、私は毎晩プロ野球の夢を見るほど、プレーオフ進出のかかった試合のことが気にかかっていました。(注:仕事も真面目にしていました) 私のようなにわか野球ファンでもこのありさまですから、実際に試合に臨む選手のプレッシャーはいかばかりかとあらためて思いました。札幌ドーム開幕戦の先発投手、金村投手は「開幕戦より緊張した」と語っていました。例年この時期はたいがい消化試合です。今年は一戦一戦が常に真剣勝負でした。“もうこれを落としたら後がない” そんな気迫で、最後まで野球ができることはとても幸せなことかもしれませんが、その重圧は非常に大きかったと想像します。
地元のテレビを観ていると、まるで、優勝したかのような盛り上がりですが、まだ優勝したわけではないんです。リーグ3位で、しかもストの代替試合が行われるかどうかが決定していないので、「暫定3位」などというまどろっこしい枕詞付きの3位です。それでも、地域に受け入れてもらおうと必死で努力してこられたファイターズの皆さんのこれまでの姿を思い返すと、“移転元年でよくぞここまで・・・”と身内の気分で感涙に浸る私でした。
『成果』の前には、たくさんの足踏みや失敗やプレッシャーや無力感や挫折感や葛藤があります。あるからこそ『成果』が輝くのでしょう。『成果』に価値が生まれるのでしょう。「3位決定」、「札幌ドーム43,000人動員」の前には、私が知っていること以上にさまざまな試行錯誤があったことと思います。
白井一幸ヘッドコーチは、おっしゃいました。「我々は常勝チームを作ろうとしているんです。すぐに結果が出そうなことだけやっていては、本当に強いチームは作れない」。昨年リーグ5位のチームを今年プレーオフ進出チームにまで躍進させたファイターズのコーチングは、私にまた前進する力を与えてくれます。