コーチ石川の感動日記

56.相手の抵抗を封じる術

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35Fから雪の札幌市内を望む~(日本海方面)

 看護師のTさんのことを、私は常々“コミュニケーションの達人”、あるいは“ネイティヴ・コーチ”と呼んでいます。

 Tさんが緊急の指示をドクターにあおごうと電話をかけました。「今、忙しいから後にしてっ!」。冷たくガチャ切りされてしまうことも珍しいことではないそうです。めげずにもう1回かけます。「だから!今、忙しいのっ!」。またガチャ切りされました。この場面で、皆さんだったらどう感じますか? どうしますか? 「忙しい、忙しいって、あんた、こっちだって忙しいのよっ!緊急なのっ!!」。プチッときてしまうところです。が、Tさんは違うのです。

 Tさんは、切られた電話を脇に置いて、自らカルテを持ってドクターの部屋まで走ります。ニッと笑って、ドクターにカルテを差し出します。「センセ! 忙しそうだから、私、来ちゃいました。ご指示をお願いします!」。こうなると、ドクターも、「しょうがねぇな~」。その場ですぐに指示をくれるのだそうです。ガチャ切り2回の相手に、ニッと笑えるものなのでしょうか? でも、緊急なんだからそれですぐに指示がもらえるのなら、それはそれですごく効果的な方法と言えます。

 急に患者さんの手当てをしなければならなくなったドクター、たいそう機嫌が悪い時があるそうです。「ったく、こんな時になんで俺がやらなくちゃいけないんだよ・・・」。ブツブツ怒りをぶつけながら傷口を縫い始めるドクターに向かって、Tさんがしみじみと一言。「先生、、、うまいもんだねえ~」。これでもう、そのドクターはだまってしまうそうです。Tさんのこうした対応ぶりには天性のセンスを感じます。

 『承認してくれる相手を人は拒絶できない』

 このことを知ってから、私も対人関係が格段に楽なものになりました。「人は怖くない」,「闘う相手は誰もいない」と思えるようになりました。相手を「認める」,「受けとめる」ということは、相手の抵抗を見事に無力にしてしまうようです。これ以上最強の術は他にないような気がします。それを、いつも自然体で実践できるTさんを私は心から尊敬しています。

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