6.欲しいものを先に渡す
ニュース
「とにかくキョーレツですから!今回は、強烈なメンバーを集めましたから、ひとつよろしく」“あの、何名ぐらいの方が強烈なんでしょう?”「全員です」 “はぁ、、、どんなところが強烈なんでしょう?”「もうすべてにおいてです。まず、全員が最後まで帰らないこと、これが今回の研修の成果だと思ってますから、とにかくよろしく」“はぁ・・・がんばります”
この週末、ある企業の管理職の方々の「コーチング研修」を担当しました。しばらく前からずっと憂鬱でした。「強烈って言ったって、明日の受講者って一体どんな人たちなんだろう?」管理職対象のコーチング研修はいつもやっていることです。ご受講いただく方が私より全員年上、社会人の大先輩という状況にももう慣れたつもりでいました。なのに、私は憂鬱でした。「全員強烈っていったい・・・???」
会場に入ると、「全員出席です。これがまず今日の成果です」と人事のご担当者はご機嫌でした。私はますます憂鬱でした。実際に、管理職の方がたの前に立つと、確かに強烈(いや、失礼・・・)、貫禄があります。私は、コーチに言われた言葉を思い出しました。「自分が欲しいものを先に渡す」
開講の開口一番、私は皆さんを承認するところから始めました。「皆さんのようなお忙しい立場の方がたがこんな貴重な時間に時間通り集ってくださったことをとても嬉しく思っています。決して無駄な1日にしてはいけない、そんな使命感をもって来ました。皆さんは、私が経験してきた以上に大勢の部下の方を抱え、多くのマネジメント経験をお持ちです。私が皆さんがたにお教えするようなことは何もありません。これまでやってこられてうまくいってきたこと、その方法はぜひこれからもお続けになってください。今日は、さらにもう一つ武器を増やしていただくためにコーチングをご紹介させていただきます。・・・・・・・」
午前中は、、、私の目を一度も見ない人、誰かが発言するとすぐにチャチャを入れる人、それに対してまた誰かがつっこみを入れ、私の存在を無視して話し続ける人、「それを私にどうしろと言うの?」というような会社の問題点について質問してくる人・・・、たしかにエネルギーを使いました。私は、できるだけ皆さんの発言を受け止め、承認しながら進めました。
午後からは、、、、「やっぱり、これは大事だよ」「感動した~」「まず、部下のシャッターを開けさせないとな」「もっと素直にならないと」などの声が聞こえてくるようになりました。最後には、まだ休憩時間が残っているというのに、「先生、さ、始めましょ!」と先を促される始末。その声に他の方も「よっしゃ、やろう!」とのかけ声。私は、この方たちのことを何も知らないうちから、「強烈」という言葉にただびびっていたことを深く反省しました。
最後まで、自分よりも年下の社会人経験浅い私の話に耳を傾け、素直に気づきを得てくださったこと。研修の最後にいただいた拍手。私が欲しかったものでした。「相手から認められたい。講師として認めてもらえなかったらどうしよう」その想いが足をすくませていました。相手から認められたかったら、まず先に相手を認める。このことを実感した1日でした。そして、先入観で人と向き合ってはいけないということ。
「全員、帰らずに最後まで受講してくれました。これが私の一番の成果です」人事のご担当者様もいっそうご機嫌でした。