コーチ石川の感動日記

69.微差を見逃さない

ニュース

 ある病院様に、かれこれ半年ぐらい『コーチング講座』でうかがっています。お忙しいお立場の皆様がたですので、今月は“傾聴のスキル”、今月は“承認のスキル”と細切れに進めています。4月はちょうど半年たったところでしたので、「この半年の成果をふりかえる」というテーマにしました。

“○○さん、いかがですか? 半年、コーチング講座を受けてこられて、何か成果と感じられたことはありましたか?”
「ん~、・・・これといっては、ないんですけど~」
“何でもいいんですよ。この講座を受ける前と今とで、自分が変わったと感じたことをお話しいただけませんか?”
「いや~、別に~、あまり変わってはいないんですけど~、・・・」

 皆さん、意外と煮え切らない様子です。コーチとしては、“じゃ、何だったのよ? この半年間?!”と、ちょっとガクッときてしまいます。
“変化は感じられなくても、意識するようになったことは何かありませんか?”
「そうですね~。・・・『声をかける』というのは心がけるようになりました。自分から、そういうことをするのは苦手だったんですけど、なるべくこちらからスタッフにも声をかけるようにしました」
“ほう、それはすばらしい! そのことによって、何か相手に変化は感じられましたか?”
「う~ん、・・・以前よりは、向こうからも報告をしてくれるようになりましたね」
“おお!それって、すごい成果じゃないですか!”

「たいしたことはしていないんですけど、いきなり教えるのではなく、考えさせるようにもっていったら、スタッフが自主的に動くようになったかな、ってちょっと思います」
「そんなに変化は感じてないんですけど、ほめるようにしたら、こちらの期待以上の仕事をしてくれるようになったみたいです」
“それは、すごい!すばらしいじゃないですか!! あの~、皆さん、それってすごい成果だと私は思うんですけど”
「私は、ぜんぜんダメで、話を聴こうと思っていても、つい自分の言いたいことをしゃべってしまいます。いつも、後になって反省しています。またしゃべり過ぎたって」
“ほう!それは貴重な成果ですよね。だって、コーチングを学ぶ前は、そういう意識は全くなかったわけでしょ? しゃべり過ぎたって後で反省することもなかったわけでしょ? これは○○さんにとって大いなる前進ですよね”

 『成果を出す』と言うと、売上が2倍になること、部下がたちまち超人になること、職場が夢のような世界になることと思い込んでいる方が案外多いような気がします。だから、ちょっとでも部下が仕事に工夫を加えたとしても、前よりちょっとでも早くできたとしても、劇的でない成果はそのまま見過ごされてしまっているような気がします。微差が大差を生む。そのことをよくご存知のはずなのに、どうしても劇的な成果を追い求めるあまり、その手前にある微差を見逃して、かえって相手のモチベーションを下げます。

 小さな成果を見逃さないでください。先週よりも今週、昨日よりも今日、今朝よりも今、ちょっとでも前進が見られたら、思いっきり承認しましょうよ。日々のささやかな成果を見逃さないコーチのあたたかい視線が、相手の“劇的な前進”を促す力になるのです。

一覧に戻る