85.逆境の中の講演
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羊が丘展望台より札幌ドームを望む
「皆さん、ご心配をおかけしております。昨日も大敗してまいりました」。こんな言葉から、ファイターズの白井一幸ヘッドコーチは講演を始められました。今シーズンが始まって初めてご一緒した機会でした。ファイターズはリーグ5位、借金15、3連敗、最悪の状態でペナントレースの前半戦を終了したところでした。よりにもよってこんな時期に、「コーチングで人を育てる」という話をしなくてはならないなんて、けっこうキツイです。説得力も何もありません。私は、白井ヘッドコーチにお会いするまでは、非常に重たい気持ちでした。
「皆さん、調子の悪い選手、調子の悪いチームの監督、コーチは、どんな様子だと思いますか?だいたい調子が悪いと背中が丸まる、顔が下を向く、声のトーンが落ちる、行動が消極的、というイメージですよね。私も正直その心境です。しかし、そういう表情でいると、“ああ、たいへんなんだな”と同情はしてくれても誰も期待してくれません。ダメなときほど、指導者がどんな態度でどう声をかけるかが大事なんです。・・・“絶対に勝つ!”選手が皆この気持ちになれたら、結果は必ず出ます。チームは今いい雰囲気になっています。皆が“ヒルマン監督のために”という気持ちで闘っています。後半戦は、必ず巻き返します。期待していてください!」
白井ヘッドコーチは、今回も全くブレませんでした。凛として語られるお姿に私は胸が熱くなりました。「絶対に勝つ!」。ほとんど絶叫でした。逆境にあってもなお、「成果を出す」というところから降りない固い決意と信念がにじんでいました。私、思わず、涙、でした。“この人はほんまにスゴイ!この精神力”。ただ、感涙でした。
「昨日(15vs4でロッテに大敗)、試合終了後、ミーティングをしました。それが終わっても選手が帰ろうとしないんです。私が豊平川に飛び込むんじゃないかって心配してるんです。だいじょうぶだから、と言って帰しました。選手に心配されるコーチっていうのもどうかと思うのですが、、、」
選手に心配されるコーチ!私はステキだと思います。「チームは良い雰囲気になっている」。この言葉はどうやら本当のようです。
“この時期があるから、優勝したときに泣けるんです”
「本当にそうなんです。泣けない優勝っていうのもありますからね」
優勝したら一緒に泣こう! 心に固く誓いました。逆境のときにしか聴けない話というのもなかなか貴重なものです。
優勝した後に一緒に講演会をするときのイメージトレーニングを始めています。
これが白井ヘッドコーチの右手だ!