コーチ石川の感動日記

88.叱り分ける

ニュース

image92_1
ついにここまで到達しました!

 思い起こせば半年以上も前のこと。冬休み期間中に、高校2年生の就職セミナーを担当していたときのことでした。その日の生徒さんは、みんな元気、活発。セミナー時間中も落ち着きなくソワソワした態度です。退屈なのか、テキストに落書きを始めたり、机の上に突っ伏したりしています。注意しようかとも思いますが、「まあ、他の人に迷惑をかけているわけでもないのでいいか」。
 
 休み時間には、外は雪だというのに、制服のまま飛び出して駆け回っています。本当に元気な生徒たちです。靴やズボンに雪をつけたまま、ドヤドヤと入ってきます。その日は、学校ではなく、市の施設を会場に借りてセミナーを開催していました。一般市民の方も出入りされる場所です。生徒たちが持ってきた雪で廊下は水びたしです。その上を、他の利用者の皆さんが滑らないようにおっかなびっくり歩いていかれます。これには、私もカチンときました。

 「みんながとても元気だということはすばらしいことだと思っています。こんなに寒くても外を駆け回ってくる元気があるなんて、私はすごいと思う。だけど、この建物は、一般の方も出入りされる場所です。廊下が水浸しで、歩きにくくて迷惑なさっています。みんなだけが使っているわけではないんです。どんなに元気でも人に迷惑をかけることは、マナー違反です。今日、社会人になるための勉強をしに来ているみんななのに、社会人らしくないのは、ものすごく残念です。今、廊下を汚してきた人たち、掃除してきてもらえませんか?!」

 セミナーの時間中でしたが、私はかなりきつい口調で叱りました。が、生徒たちは納得してくれました。数名がモップや雑巾を借りてきて、廊下を拭いてきれいにしました。その後、セミナーを再開しました。これだけのことでしたので、私もすっかりこのことは忘れていました。
 
 半年後のこの夏、また同じ会場で高校3年生向けのセミナーが開かれました。今回は、私は日程が合わず、講師として出向くことはできませんでしたが、この回を担当された先生が、私にこんな報告をしてくださいました。

 「前回、元気のよかった2年生、覚えてますか?あの子たち、3年生になって今回もまた参加してくれていました。そうしたら、石川さんに叱られたことを覚えていて、『ここには雪を入れちゃいけないんだよ』ってお互いに言い合ってるんです。夏なのにね、おもしろい子たちですよね。ちゃんと覚えてるんですね」

 私はなんだか胸が熱くなりました。「いけないことはいけない」と言ったことをあの子たちは半年たってもちゃんと覚えていてくれたんだ。相手を認めた上で、「なぜいけないのか」を伝えれば、相手はちゃんとわかってくれる。

 「叱る」と「怒る」は違う。とよく言われます。たしかに、コーチングの中には、「叱る」も「怒る」もありませんが、「叱る」ということをあえてコーチングのスキルに置き換えて言うとすれば、「相手の成長を期待して、強く要望する」ということでしょうか。根底に、「相手に対する期待」があれば、相手はわかってくれます。そして、叱る側の叱る基準のようなものも必要なのではないかと思います。「やろうとしてうまくいかなかったこと」に対しては私は絶対に叱らないようにしています。それを叱っては、相手はもうチャレンジしなくなります。その代わり、「他人に迷惑をかけたとき」はがっつり叱ります。叱り分けることによって、相手も、「なぜ叱られたのか」納得してくれるように思います。

image92_3
夕日のノシャップ岬
image92_4
これ以上北に日本はありません
image92_5
サハリンを臨む:氷雪の門

一覧に戻る